しこり発見から告知まで5
着替えてネックレスをつけていると、
「こちらで今後の治療について説明しますね」と声をかけられた。
えええ!今後の治療っていうことは...マジか。嘘だろ。
画像がうつった画面の前に座る。
もう他の患者さんはおらず、先生とボス。
ボスは50前くらいかな?怖そうな感じではない。
先「ご自身で感じられたこのしこりは、やはり治療が必要なもののようです。
詳しくは細胞を採って調べてみないとはっきりしないけれど...
画像をみると悪いものの可能性が高いです。
エコーでみると、このしこりのほかにも何か小さいものがたくさんうつっていて、
これはお水とかの可能性もあるのだけれど、
今言えるのは、左と比べて右のほうがその数が多いってことです。」
ガ━━━━━━━━(゚Д゚;)━━━━━━━━ン! なんていう余裕があるはずもなく。
私「どのくらい進行してるんですか?」
たしか一番最初にそう聞いたと思う。
先「うーん何をもって進行とするかにもよるので...」
と先生は言葉を選んでいる。
今、そういう優しさはいらないからはっきり言えよと思っていると、
ボスらしき先生が言った。
ボ「大きさどれくらいだっけ?」先「3cm弱です」
ボ「乳がんの一つの基準はしこりの大きさ。
基本的には2cmと5cmというところで線がひける。」
私「治療はどれくらい時間がかかりますか?」
ボ「一般的に、あなたのような若い女性の場合、
まず化学療法でしこりを小さくしてから手術するのがいいと思う。
化学療法にだいたい半年かかる。」
え、半年も!?最初の先生は10日といってたのはいったい...。
万が一でも10日程度と思っていた私は、手術は少し調べたが、
治療についてほとんど勉強していなかった。
私「仕事はどれくらい休むようになりますか?」
ボ「仕事...休めない?うーん...
事務だったら大丈夫かもしれないけど、
その感じだと残業とかあるでしょ...。
副作用は個人差があるけど、できれば休んだほうがいい。
まあそのあたりはまた検査の後で。」
今まで歯切れがよかったボスも、言葉を選んでいる。
そうか、そんなにキツイのか。
先「悪い物かどうか調べるために細胞をとって検査するのですが、
今後の治療のことも考えて多めにとります。
通常はその後にMRIの検査をしますが、先にMRIをした方がいいです。
ただ...今検査が混んでいるので...年明けになっちゃうかな...」
ええ、そんなに待つの。休みだから仕方ないけど。
ボ「両方年内にねじ込んじゃえよ。
年明けになるとその後も時間がかかって、あれだから。」
結局水曜にMRI、金曜に組織診。ボスありがとう。
なんだかちょっとだけ泣きそうになった。
お礼を言って、採血して病院を出た。
隣りの駅まで歩いて、近くのカフェに入る。
どうしよう。どうしようもない。
家族への報告、仕事、お金、保険...。
家に帰る前に、休日出勤中の上司に報告、ちょっとだけ泣く。
しばらく通えないだろうジムを解約。
来年一月に期限が切れる脱毛サロンを予約。
不思議とこんな時でももったいない精神が。
ショックは大きかったが、行動は落ち着いていた。
細胞診もしていないのに、
乳がんだということはすでに受け入れていた。
同居の家族になんて伝えよう、そればかり考えていた。
検査していることも話していない。
結局、夜になって事実を淡々と伝えた。
その後、自室でネット検索。
ボロボロ泣いた。
どうなってしまうのか、わからないことが一番不安だった。