BCな日々のメモ

中年にさしかかったところで若年性乳がん。 Breast Cancerな日々のメモ。

告知のあり方

昨日緒形拳のドラマを見た。医者が主役なので、舞台が病院になることも多く、抗癌剤で入院したときのことをいろいろ思い出した。

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隣りのベッドのSさんは術後のようで、よく点滴棒を押しながらリハビリがわりに廊下を歩いてた。なんとなく不思議系。見た目もしゃべりもなんとなく若さというより、幼さとかを感じさせる。よくみると、あれ、私より年上なのかもって言う感じ。
外科病棟の大部屋は昼間でもみんなほとんどカーテンをひいていて、挨拶する程度。外科というだけで、お互い何の病気なのか、どういう状況なのかはっきりとは知らない。でもカーテン1枚向こうのプライバシーは言わずもがな。こんな状況が気楽でもあり、気まずくもあり。会話のない大部屋って微妙だ。
お隣りに看護士さんがやってきた。当然ながら会話が聞こえる。そういえばさっき担当医と出ていってたな。戻ってきてたんだ。
「肺に転移してたのはちょっとショックだったけど...」え、転移!?「え...そうなの?」看護士さんが戸惑っている。
その後は医者から提示されたらしき治療の話。Sさんは落ち着いているが、一気に喋っている。その時はお見舞いも来ておらず、きっと誰かに話したかったのだろう。お姉さんと親代わりの叔父さんにはメールで連絡をしたらしい。
しばらくしてSさんの担当医がやってきた。メールで転移の話を知ったSさんの叔父さんから電話があったらしい。本人にだけ伝えたことを怒り、自分に説明しろと言っているそうだ。
「今は直接患者さんに伝えるのが一般的になっていて...」担当医は色々言い訳?をしている。とにかく叔父さんがすごい怒っているらしい。Sさん本人は医者の言葉にきちんと返事をしている。
カーテン越しに伝わってくる状況を目の前に、転移の時もあっさりと本人告知されてしまうんだな、とぼんやり考えた。一昔前のドラマとは違うのだ。
Sさんの担当医があっさりと本人告知したのかはわからない。熟慮した結果かもしれない。入院して初めて知ったけど、医者ってほんとに忙しい。一人一人告知の仕方を考えろっていうほうが無理なのかもしれない。それにSさん本人が怒っているわけではない。でも、なあ。
問診表に告知希望欄がある時代。でもそれが患者の本当の気持ちかどうかなんて、たぶん患者本人にもわからない。Sさんの叔父さんのような人は必要だ。正解の出ない答えを、医者にちらっとでも考えてもらえるように。